「謎のルビー」(横溝正史)

短篇ジュヴナイルといえども無視できない

「謎のルビー」(横溝正史)
(「横溝正史少年小説
  コレクション④青髪鬼」)柏書房

「横溝正史少年小説コレクション④青髪鬼」

「謎のルビー」(横溝正史)
(「蠟面博士」)角川文庫

昭和時代の表紙
令和4年復刊版表紙「面博士」となっている

サンドイッチマンと
通信を試みる少女に興味を持ち、
接触した俊太郎は
彼女の兄が無実の罪で
追われていることを知る。
研究の相方を殺害し、
相方が盗んだルビーを
横取りしたというのだ。
俊太郎は少女に味方し、
真犯人を捜す…。

横溝正史ジュヴナイルです。
紙面に制約のある短篇であるため、
展開には
多少強引なところが見られますが、
むしろこの方が少年たちにとっての
受けがよかったのではないかと
推察されます。

【主要登場人物】
深尾由美
…兄の無実を訴える少女。
志摩貞代
…実業家の妻。ルビーの指輪を紛失。
波越恭助
…貞代の従弟。実験室で殺害される。
深尾史郎
…由美の兄。恭助の共同研究者。
 ルビー事件の容疑者。
日疋
…志摩家の秘書。
藤生俊太郎
…探偵に興味を持つ青年。
 由美を支援する。

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今日のオススメ!

本作品の読みどころ①
失われたルビーの意外な隠し場所

殺害された現場からは
ルビーは発見されず、
容疑者である史郎も知らないのです。
ではルビーは一体どこに?
実は意外なものの中に
偶然入り込んでしまい、
それが意外なものから
手がかりが得られます。
意外なもの、一方は植物で一方は動物。
少年少女向けに
上手に創られてあります。

本作品の読みどころ②
真犯人を捜す謎解き

史郎は殺人を犯すような人物でもなく、
恭助もまたルビーを盗み出すような
性格ではない
(親戚中の鼻つまみ者だが)のです。
では犯人は一体?
少年読者にも推理できるように
謎解きの手がかりが与えられています。

本作品の読みどころ③
少女を助けるお兄さん探偵

本作品の探偵役・藤尾俊太郎青年は、
さしずめ「お兄さん探偵」という
役どころでしょうか。
兄の無実を信じている少女を救う
お兄さん探偵という設定は、
同じジュヴナイル作品の
「バラの怪盗」「『蛍の光』事件」にも
見られます。
推理小説は当時、どちらかといえば
男の子の読者が多かったのでしょうが、
読み手が女の子であっても、
由美に自分を重ね合わせて
俊太郎の活躍に
胸をときめかせることができるのです。

こうしてみると、
読み手の子どもたちのために、
横溝正史がかなりの工夫を
凝らしていることがわかります。
そしてジュヴナイルにおいては
長編よりもむしろ短篇にこそ
その傾向が見られるのです。
短篇ジュヴナイルといえども
無視できないのが横溝作品なのです。

(2018.9.20)

Mathieu KesslerによるPixabayからの画像
おどろおどろしい世界への入り口

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